転職回数が多い薬剤師の転職ガイド|辞めどき・面接の答え方・退職の伝え方まで
目次
「転職回数が多いと、面接で落とされるんじゃないか」「辞めたいけど、引き止められそうで言い出せない」。
この記事は、noteで書いてきた「辞めどき」「転職回数」「退職の伝え方」の3本を、転職の始まりから終わりまでの1本の流れにまとめ直した完全版です。
先に結論
- 面接する側が見ているのは、回数よりも「どんなときに辞める人か」
- 転職理由は、くり返さない理由として伝わるかで受け取られ方が変わる
- 退職は、次の職場を決めてから、会社が解決できない事情として伝える
書いている人:調剤薬局で18年働き、8回転職してきた薬剤師です(派遣も含めると10の職場)。面接で失敗したことも、管理薬剤師として面接する側に立ったことも、引き止められて頭が真っ白になったこともあります。
転職の全体の流れ
転職でつまずく人の多くは、順番を間違えています。特に「先に辞めると言ってから、次を探す」と、引き止めや焦りで判断がぶれやすくなります。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 辞めどきを見極める | 「辞めたい」のタイプで判断が変わる |
| 2 | 次の職場で確かめることを決める | 同じタイプの悩みをくり返さない |
| 3 | 在職中に探して、面接を受ける | 転職理由は「くり返さない理由」で |
| 4 | 内定が出てから、退職を伝える | 会社が解決できない事情で |
| 5 | 引き止めに対応して、引き継ぐ | お礼から始めて、気持ちは変えない |
ただし、ミスが増えて体が限界に近いとき(このあと説明する「能力低下型」)は、順番より今の職場を離れることを優先してください。
ステップ1 辞めどきを見極める|「辞めたい」の3タイプ
自分の転職と、管理薬剤師として相談を受けてきた経験から、薬剤師の「辞めたい」は3つに分かれます。タイプによって、「頑張っていい悩み」と「すぐ離れたほうがいい悩み」が違います。
| タイプ | よくあるサイン | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 対人関係型 | 管理薬剤師や同僚、事務さんと合わない | 期限を決めて頑張る。店舗異動で解決することも |
| 自己評価型 | 自分は役に立っていない、成長できないと感じる | 相談も改善もできないなら、早めに離れる |
| 能力低下型 | 計算ミスや見落としが増えた | 相談も改善もできないなら、すぐ離れる |
対人関係型は「期限」を決める
調剤薬局は少人数の職場なので、1人と合わないだけで毎日がしんどくなります。
- 「次の人事異動まで」「半年」など、終わりを先に決める
- その間に、上司やエリアマネージャーへの相談、店舗異動の希望など、打てる手は打つ
- 期限が来ても変わらなければ、迷わず動く
管理薬剤師は薬の管理のプロでも、人をまとめることは教わらないまま任されていることが多いです。合わないときは、直接ぶつかるより、その上の立場の人に相談したほうが早いこともあります。
自己評価型は「環境」で戻ることが多い
自己評価は、環境が変わるだけで意外とあっさり戻ります。管理薬剤師の立場から見ると、「自分は役に立っていない」と感じている人ほど、周りからは頼りにされていることも少なくありませんでした。辞める前に一度、「私の仕事をどう見ていますか」と聞いてみるのもおすすめです。
能力低下型は「待ったなし」
私自身、薬剤師を10年以上続けていたころ、ビオスリー配合錠を1日6錠・28日分、21錠シートなら何枚か、という普段なら一瞬の計算(8枚)が、すぐに出てこなくなった日が続きました。そのとき、転職の準備を始めると決めました。
「いつもできていたことが、できなくなった」は、体からの警告です。薬剤師のミスは患者さんの健康に直結します。気分の落ち込みや不眠が長く続く場合は、職場選びより先に医療機関への相談も考えてください。
「辞めたら迷惑がかかる」と動けない人へ
私も、仕事を抱え込んで、辞めると言い出せずにダラダラ続けた時期があります。8回転職してきて、辞めたあとに思うことの多くは「もっと早く切り出してもよかった」ということです。
人が足りないなら、人を補うのは会社の仕事です。仲間を思うなら、抱えている仕事を見える形にして、早めに相談するのがいちばんやさしい選択です。
ステップ2 次の職場で確かめることを決める
辞めた理由と同じ悩みをくり返さないために、タイプごとに確かめることを先に決めておきます。
| 辞めたタイプ | 次の職場で確かめること |
|---|---|
| 対人関係型 | 管理薬剤師の人柄、スタッフがどのくらい長く勤めているか |
| 自己評価型 | 同じ立場の薬剤師がどんな役割を担っているか、教育や評価の仕組み |
| 能力低下型 | 処方箋枚数に対する薬剤師の人数、実際の退勤時間 |
職場の見分け方は、休みやすい薬局チェックリストにくわしくまとめています。
辞めてから探すか、在職中に探すか すでに辞めているほうが、転職エージェントは急いで探してくれます。ただ、急いで決めると同じタイプの職場を選んでしまうこともあります。待ったなしの能力低下型でなければ、在職中に冷静に探すのがおすすめです。
ステップ3 面接|転職回数はこう見られている
面接する側が見ている3つのこと
- すぐに辞めないか
- どんなときに辞める人なのか
- 人間関係に合わせられるか
いちばん大事なのは2つ目です。前の職場を辞めた理由から、「うちでも同じことが起きたら辞めるのか」を想像しています。
失敗した答え方・うまくいった答え方
私が実際に面接で使った答え方です。
| 伝えた理由 | 結果 | 相手にはこう聞こえた |
|---|---|---|
| 年収が上がるから | 失敗 | 「もっと条件のいい薬局があれば、そっちへ行く人」 |
| 副業と両立するため | 失敗 | 「副業がうまくいったら辞めるのでは」 |
| 結婚 | スムーズ | 職場への不満ではなく、何度も起きない生活の節目 |
| 働きすぎで体が限界に近づいた | スムーズ | 頑張ってきた人。ふつうの働き方なら辞めない人 |
失敗した2つの原因は同じで、相手が何を気にして質問しているかを考えず、自分の事情だけを答えていたことでした。
転職理由の言い換え表
嘘をつく必要はありません。伝える順番と切り口を変えます。
| 本音 | そのまま言うと | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 年収を上げたい | また条件で辞めると思われる | 「頑張りが評価に反映される職場で、長く腰を据えたいと考えました」 |
| 人間関係がつらかった | 人間関係でもめる人と思われる | 「チームで相談し合いながら働ける環境で、長く働きたいと考えています」 |
| 残業が多すぎた | 悪口に聞こえることも | 「任された仕事は続けてきましたが、残業が月〇時間続き、体が限界に近づきました」と事実だけ短く |
| 副業を続けたい | いずれ辞めると思われる | 転職理由の中心に置かない(就業規則で届け出が必要な場合は、入社前に必ず確認) |
| 結婚・引っ越し | そのままで大丈夫 | 「生活が落ち着いたので、ここで長く働きたいと考えています」 |
回数が多いことは、先に認める 「回数が多いことは自覚しています」と先に言ってから、「次はこういう理由で長く働きたい」と続けると、言い訳っぽさが消えます。
誰が採用を決めるかで、転職回数の重さは変わる
管理薬剤師として採用に関わって気づいたのは、転職回数が多い人を、管理薬剤師は社長ほど気にしていないということです。
| 社長・本部 | 現場の管理薬剤師 | |
|---|---|---|
| 気にすること | すぐ辞めないか(紹介手数料を払うのは会社) | この店で2〜3年しっかり働いてくれるか |
| 転職回数の見え方 | 数字として敏感に見られやすい | ほとんど気にならない(2〜3年で顔ぶれは入れ替わるため) |
だから転職回数が多い人ほど、管理薬剤師の意見が採用に入る職場が狙い目です。
- 面接や見学で、管理薬剤師と話す時間があるか
- 採用を決めるのが本部だけか、店舗の意見も入るのか
転職エージェントを使うなら、「転職回数が多いので、現場の管理薬剤師と話せる薬局を優先したい」と伝えると、紹介先を絞ってもらえます。推薦文で人柄を補ってもらえるのも、回数が多い人には心強い点です。
ステップ4 退職を伝える|内定が出てから逆算する
| いつ | やること |
|---|---|
| 内定が出たら | 就業規則で「退職の何か月前までに申し出るか」を確認 |
| 退職日の1〜3か月前 | 直属の上司(管理薬剤師やエリアマネージャー)に、最初に伝える |
| 伝えたあと | 引き継ぎの範囲と日程を決める |
| 退職日まで | 引き継ぎをやりきる |
伝える相手と理由
- 同僚に先に話すと、うわさで上司の耳に入り、印象が悪くなります。まず直属の上司へ。
- 「給料が低い」「人間関係がつらい」は、「給料を上げるから」「店舗を変えるから」と引き止めの材料になります。家族の事情や引っ越しなど、会社が解決できない事情を中心に伝えると、話がすんなり進みます。
私がすんなり辞められたのは、「実家の近くで働く事情ができた」と伝えたときでした。
ステップ5 引き止められたら
異動を勧められたら、その場で答えない
「実家の近くにも、うちの店舗があるよ」。店舗の多い会社では、この返しはよくあります。私はその場で答えに詰まり、「一度持ち帰って考えます」と伝え、後日「実家の近くで、すでに次の職場が決まっています」と伝えて話を進めました。
- その場で断らない:すぐ断ると、理由が口実だったと思われることがあります
- 次の職場を決めてから伝える:「もう決まっています」とそのまま言えるので、話がぶれません
昇進の話は「そのポストの人の働き方」で考える
退職を伝えたあと、役員クラスの方がわざわざ会いに来て、「一つ上のポストを任せたい」と言われたことがあります。私は魅力を感じませんでした。そのポストの人が、休みをほとんど取らずに頑張るか、休めば不満を言われるか、という働き方をしているのを見ていたからです。
肩書きではなく、その働き方を自分が望むかで考えると、判断がぶれません。
引き止めの言葉と返し方
断るときは、お礼 → 気持ちは変わらない → 引き継ぎはやりきるの順番で伝えます。
「評価していただいて、ありがとうございます。ただ、次の職場がすでに決まっていて、気持ちは変わりません。退職日まで、引き継ぎはしっかりやります。」
| 言われた言葉 | 返し方の例 |
|---|---|
| 「人が足りないから、もう少しいてほしい」 | 「退職日までは、できる限り引き継ぎをします」(人手の問題は会社が解決すること) |
| 「給料を上げるから」 | 給料以外の理由がないか、自分の気持ちを確かめてから答える |
| 「後任が決まるまで待ってほしい」 | 「〇月〇日までなら調整できます」と日付で答える |
| 「近くの店舗に異動したら?」 | 「一度持ち帰って考えます」→ 後日「次の職場が決まっています」 |
| 「一つ上のポストを任せたい」 | お礼を伝えたうえで、そのポストの働き方を望むかで判断する |
面接前・退職前のチェックリスト
面接の前
- 自分の「辞めたい」がどのタイプか言葉にできる
- 次の職場で確かめることを3つ決めた
- 転職理由を「くり返さない理由」に言い換えた
- 回数が多いことを先に認める一言を用意した
- 前の職場の悪口にならないか読み返した
- 採用を決めるのが本部か現場か確認した
- 副業がある場合、就業規則の届け出を確認した
退職を伝える前
- 次の職場が決まっている
- 就業規則の申し出期限を確認した
- 最初に伝える相手(直属の上司)を決めた
- 会社が解決できない事情として理由を整理した
- 引き止められたときの返しを用意した
- 引き継ぐ仕事を書き出した
よくある質問
Q. 薬剤師の転職回数は、何回から「多い」と思われますか? A. 職場によって受け止め方は違います。回数よりも、理由に一貫性があるか、短い期間で辞めた理由をどう説明できるかのほうが見られています。
Q. 人間関係で辞めるのは、逃げですか? A. 逃げではありません。ただ、誤解や業務の偏りが原因なら改善できることもあるので、期限を決めて打てる手を打ってから判断すると、納得して次に進めます。
Q. 本当の退職理由を言わないといけませんか? A. 不満をそのまま伝える必要はありません。家族の事情や次の職場など、会社が解決できない理由を中心に伝えると、引き止められにくくなります。
Q. 辞めてから転職活動しても大丈夫ですか? A. 薬剤師は求人が多いので、辞めてからでも見つかりやすいです。ただ、急いで決めると同じ悩みをくり返しやすいので、次の職場で確かめることを先に決めておきましょう。
まとめ
- 「辞めたい」は対人関係型・自己評価型・能力低下型の3つ。タイプで判断の速さが変わる
- 面接では、転職理由を「くり返さない理由」に言い換える。回数が多い人は、管理薬剤師が採用に関わる職場が狙い目
- 退職は次の職場を決めてから。引き止められたら、お礼から始めて気持ちは変えない
転職回数が多いことは、それだけでマイナスではありません。いろいろな職場を見てきた経験は、伝え方しだいで強みになります。
さいとう|薬剤師歴18年目・二児のパパ。プロフィール